スポンサーリンク

「若者のみそ汁離れが進んでいる」は本当か?

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 3

Yahoo!ニュース(産経新聞)で、「若者のみそ汁離れが進んでいる」とのニュースが報じられました。「全国的に味噌の年間購入量が減っている」など、裏付けのあるデータも紹介されています。一見、したところ説得力があるようにも思えるこのニュースが、どのような意図を持って報じられたのか考察してみました。

「若者のみそ汁離れが進んでいる」と報じたのは、2017年6月29日にYahoo!ニュースで公開された下記の記事です。(出典は産経新聞)

内容を要約すると、

大阪ミナミの繁華街で若者にみそ汁に関するインタビューを行った結果、「1、2ヶ月飲んでいない」と答える人もいるなど「若者のみそ汁離れ」が進んでいる実態が明らかになった。

とのことです。また、裏付けとして次のようなデータが記載されています。

総務省の家計調査によると、1世帯あたりのみその年間購入量(2人以上、農林業・漁業世帯を除く)は昭和54年には12・667キロだったが、徐々に減少。平成元年に10キロ、21年に7キロをそれぞれ下回り、28年には5・255キロと54年の半分以下にまで落ちている。

これだけを見ると、「確かに若者はみそ汁を飲まなくなっている」というふうにも見えます。果たしてこの記事の内容はどの程度真実に近いといえるのでしょうか?

スポンサーリンク

「若者のみそ汁離れ」は本当か?

この記事の内容に対しては異論を挟む声もあります。たとえば、料理研究家の土井善晴先生はこの記事についてTwitterで次のように語っています。

つまり、「最初から味噌汁を飲む文化がない土地にいってインタビューしたんだから、こういう結果になるのは当たり前だ」ということです。ちなみに、「大阪の人は元々あまりみそ汁を飲まない」ということは、引用元の記事でも次のように触れられています。

みその購入量は「東高西低」の傾向がはっきりと読み取れる。中でも、近畿が特に低く、大阪市と神戸市は、最低レベルの少なさだ。

つまり、記事を掲載したメディア側も土井先生が指摘したような事実を知らなかったというわけではなく、「知っていて、その上であえてみそ汁を飲む人が少ない大阪でインタビューを行った」と考えたほうがいいでしょう。このあたりからなぜこのようなニュースが報じられたのか、その意図がある程度透けて見えます。

直近数年に限れば、みそ汁離れが進んでいるとはいい難い

私もこの記事を書く上で、みその消費量に関するデータを調べてみました。全国味噌共同組合連合会が示している味噌の生産動向に関するデータによると、平成22年~28年において味噌の生産量は次のように推移しています。

参考:

これを見ると、必ずしも近年味噌の生産量が大きく減少している傾向は見られません。むしろ、味噌全体の量のうち8割を占める米みそは、その量が増えています。

記事では「戦後・昭和の頃と比べて人世帯あたりの味噌の購入額が減っている」という論調なので、上のデータと内容が矛盾しているわけではありません。しかし、日本人の食生活が多様化していることと合わせて考えれば、いくらなんでも昭和の時代と比較して量が減っているから「みそ汁離れだ」という論調には疑問が生じることも事実です。そんなことを言ったら、大抵の日本食は戦後の比べればほぼ間違いなく「食べる量は減っている」と言えるはずだからです。

実は、記事を公開しているYahoo!ニュースも「みそ汁業界全体が下火になっている」と主張しているわけではありません。記事にアクセスすると、「関連記事」として下記の記事も合わせて紹介されているからです。

 日本の“おふくろの味”といえばみそ汁だ。しかし、近年のライフスタイルの変化や社会構造の変化、そして新技術の普及で、そんな伝統食のイメージは変わりつつある。  日本人のみその消費量は減少の一途を…

こちらは、2015年に週刊ポストで紹介された記事です。内容を簡単に説明すると、

  • 日本人のみそ消費量は減少している
  • みそ醸造メーカーは中小企業が多く、業績悪化による倒産が増えている
  • しかし、即席みそ汁の売上は2008年から2014年で5割増しになっており、みそ汁業界全体が下火になっているとはいえない。

といったことが書かれています。こういった記事を関連記事として紹介するあたり、やはり記事を公開した側も「みそ汁離れが進んでいる」と一概に捉えているわけではないということがわかります。

記事はマルコメの宣伝のために書かれた?

しかし、ならばなおさらそのような論調で記事がかかれているのか、多くの方は疑問に思うのではないでしょうか?

実は、Yahoo!ニュース(産経新聞)がなぜ「若者のみそ汁離れが進んでいる」と報じたのか、その意図は冒頭の記事をよく読めば明らかです。注目すべきは、次のような記述です。

大手みそメーカーのマルコメは若者のみそ離れを食い止めようと、世界的なモデルやアイドルをCMに起用するなど対策に乗り出した。

記事の後半にも、マルコメが以下に若者のみそ汁離れを食い止めようとさまざまな企画を打ち出しているか、といった点が詳しく紹介されています。

これらのことから、ありていに言ってしまえばこの「若者のみそ汁離れ」に関する記事は、「マルコメのキャンペーンを宣伝するために書かれた」と考えていいでしょう。

記事中にも記載があるように、マルコメは国際的に人気のモデルであるミランダ・カーさんを起用した新プロジェクトを立ち上げています。

マタニティ姿のミランダ・カーが出演する、世界初のCM。 大切なからだに、自然の甘さがおいしいアルコール0%の糀甘酒。その魅力をお届けします。

注目すべきは、この新プロジェクトによるミランダさん来日イベントが開催されるのが「2017年7月10日」であるという点です。記事の公開日時が6月29日とこのイベントの直近であることから考えてみても、イベントを盛り上げるための話題作り、集客手段として記事が書かれたと考えるべきでしょう。

マルコメは明治以前から存在する歴史のある企業です。彼らの視点から見れば、「(昭和と比べて)若者のみそ汁離れが進んでいる」というふうに見えるでしょうし、そのことに危機感を持つことはまったく不思議ではありません。

しかし、それを平成になってから生まれたような「若者の視点」で解釈すると、違和感が生まれてしまうのもまた事実でしょう。若者は「自分がみそ汁をどのくらいの頻度で飲むか」という基準で解釈するはずだからです。

ニュースを読むときは、そのニュースがどのような意図を持って報じられたのか、「書き手の意図」を読み取るようにすると、より深くそのニュースを理解することができると思います。

スポンサーリンク
noteでも記事を公開しています(有料含む)

noteの記事はこちら

note(外部サイト)でも記事を公開しています。一部の記事は有料になっており、閲覧にはnoteへの登録と支払いが必要です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク