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ノイエ銀英伝7話感想・考察その2「ワルター・フォン・シェーンコップのキャラクター性」

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7話「イゼルローン攻略(後編)」
~シェーンコップにとっての祖国と信頼~

司令室が近づくと、案内役として警備主任のレムラー少佐が登場。銃器を預かるのはもちろん、徹底したボディチェックが行われる。シェーンコップが身につけていた万年筆が見咎められるが、「祖父の形見のお守り」ということで疑いを持たれることはなかった。IDの確認ができなかったため、即時の入室は難しいかと思われたが、要塞司令官シュトックハウゼン大将直々の命令によって、無事第三の関門も通過に成功する。

最後の関門は、「司令室をいかに占拠するか」であった。シェーンコップは万年筆を武器代わりに使い、シュトックハウゼンから中を奪って人質にとることに成功する。それだけでなく、一定以上の熱量に反応して引火爆発するガス様粒子「ゼッフル粒子」を司令室内に散布した。
最終的にシュトックハウゼンは降伏し、シェーンコップは見事任務に成功する。

仕事を終えたシェーンコップは、幼いころ帝国で過ごした時期のことを思い出す。シェーンコップが自由惑星同盟に亡命してきた理由は、門閥貴族の策謀で祖父が全財産を奪われたことが理由であった。ブルームハルトから祖父の形見の万年筆を受け取ったシェーンコップは、「作り話の中にひとつくらいは真実を混ぜておかないと、男はともかく女には気づかれてしまう」とつぶやく。

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シェーンコップを疑う、レムラー少佐の登場

帝国兵になりすましてイゼルローン要塞内部へ侵入するシェーンコップ一行の前に、司令室警備主任のレムラー少佐が登場します。これまでに登場した帝国兵たちは、シェーンコップたちにおかしな言動があったときこそ注意を払っていましたが、基本的に「敵の罠」だとの疑いは持っていませんでした。それに対してレムラーは、立場上最初からシェーンコップたちを疑いの目で見ています。

要塞に侵入する難易度がさらに高まったといえるわけですが、果たしてシェーンコップはこの事態をどのように切り抜けていくのでしょうか?

銃器のチェックを切り抜け、司令室内に「武器」を持ち込む

シェーンコップは銃器を預けるようレムラーに指示され、素直に従います。相手が自分たちを疑いの目で見ているわけですから、無駄に抵抗したりしないのは懸命な判断だといえるでしょう。

しかし、ボディチェックでシェーンコップが身につけていた万年筆がレムラーに見咎められてしまいます。この万年筆は、武器として使用するために持ち込んだものですが、彼が語ったとおり正真正銘、本物の「祖父の形見の品」です。あえてそのような大切な品を持ち込んだ理由について、彼は「嘘の中にひとつくらいは真実を混ぜておかないと、嘘だとバレてしまうから」と作戦終了後に語っています。

このとき、「男性ならともかく女性には」と語っている点を不思議に思った方もいるかも知れません。彼が万年筆で騙そうとした相手は男性のレムラーだったからです。これは一般的には女性とされることの多い「運命の女神」を意識したか、女好きのシェーンコップならではのユーモアでしょう。「女性ですら騙す自分の演技力があれば、男を騙すことなど造作もない」と言いたかったのかもしれません。

帝国のトップダウン型意思決定を利用した個人認証の突破

続いて、問題の個人認証=IDチェックが行われました。当然、正常にチェックされてしまってはバレてしまうので、読み取りができないように認証用のデバイスに細工を施してあります。レムラーは「本国に確認が取れるまで待ってもらう」と宣言しました。おそらく、マニュアルでそのように処理するようになっているのでしょうが、だとすればそれは当然ヤンやシェーンコップにも予想できる事態です。

ここで今まで黙っていたリンツが「通信を妨害されているのに、それではいつ確認が取れるかわからない」と食ってかかりました。これはもちろん、シェーンコップに指示されての演技でしょう。「本物の帝国軍兵士であるから確認されても問題はない。むしろ早く重大情報を伝えたくて焦っている」という態度を示すためのものです。

シェーンコップはリンツを制し、「ひと月でもふた月でも待たせてもらう」と応えました。これは自分が焦っていない様子を示し、レムラーを信用させるための演技です。ただし、「司令官にすぐに会いたい」という自分の前言と矛盾する内容なので、冷静に考えたらレムラーも怪しさに気がついたかもしれません。

しかし、ここでシュトックハウゼンからの催促が入り、シェーンコップらは無事司令室内に招かれることになりました。「イゼルローン要塞を無力化する手段」という、シュトックハウゼン自身が危機感を覚えるような口実で侵入していたことが功を奏したことになります。もちろん、ヤンはここまで計算に入れた上で作戦を指示し、シェーンコップもまたここで催促されるであろうことを前提に演技をしていたのでしょう。

シェーンコップにとっての「信頼」の意味

司令室に入るや、シェーンコップはシュトックハウゼンを人質にとって、帝国軍に降伏を求めました。リンツが通信手を拘束したため、この時点で以上に気がついているのは司令室内の人間だけです。

正体を現したシェーンコップとローゼンリッター連隊を、レムラーは「帝国を捨てた裏切り者」と罵り、シュトックハウゼンを犠牲にしてても要塞を渡さない意思を見せます。当のシュトックハウゼン自身は死ぬことを恐れていたようですが、部下たちが彼の命令を待たずにシェーンコップを撃つ可能性も十分にある事態です。

シェーンコップはこの自体を予想しており、火器の使用に反応して爆発を起こす物質「ゼッ古粒子」を持ち込んでいました。この物質はまったくの架空の物質なので、特に科学的な考証などは考えず、「そういうものだ」と解釈しておけば問題ないでしょう。現実に例えるならダイナマイトや、その原料のひとつである爆薬「ニトログリセリン」などに相当するものだと思われます。「粒子」であるため、SFに都合がよく宇宙空間でも使用可能です。

司令部で爆発が起これば、要塞自体は無事でもどんな不測の事態が発生するかわかりません。レムラーの立場に立ってみれば、ヤンたちが半個艦隊だけでイゼルローンの攻略を目指しているのを察することはできないからです。たとえ自分たちが敵を道連れに爆発しても、その後で味方が戦いに勝てるとは限りません。

シュトックハウゼンは「裏切れば相応の見返りを与える」としてシェーンコップを説得しようと試みました。司令部への潜入と占領というストーリーが進行する中、シェーンコップ自身の内面も同時に描かれているわけです。

ここでシェーンコップからの連絡を待つヤンたちの姿が映し出されます。連絡が遅いことから「まさかシェーンコップが裏切ったのでは」と口にするムライに「自分は危険な任務を引き受けてくれた彼を信頼する」とヤンは明確に宣言します。

シェーンコップは幼少期に帝国から亡命したため、レムラーが言う通り帝国から見れば「裏切り者」です。しかし、同時に同盟から見れば「祖国を裏切ったものたち」でもあります。歴代のローゼンリッター連隊長たちが裏切りを重ねてきたのも、彼らが自分たちの「居場所」に悩んでいたからかもしれません。

しかし、シェーンコップにそうした悩みや迷いはありませんでした。「自分を信じたヤンに筋を通す」としてあくまで作戦を実行しようとしたのです。ここでシュトックハウゼンが降伏を決意。レムラーも銃を投げ捨て、イゼルローンの司令部制圧は無事に完了しました。

シェーンコップの同盟とヤンへの想い

任務が終わった後、シェーンコップは再び幼少期に祖父と過ごした記憶を思い返していました。門閥貴族に財産を奪われ、逮捕状が請求されたことから同盟への亡命を決意した経緯が語られています。シェーンコップは幼い頃から「裏切り者」と疑いに目を向けられていたわけです。このことは彼の人格形成に大きな影響を与えたことでしょう。

明言されてはいませんが、おそらく彼の祖父は元々帝国の支配体制に嫌気が差しており、自由惑星同盟に憧れを抱いていたのではないでしょうか。生まれによってその後の人生が決まる帝国にいながら、7話の冒頭で「お前は何になりたい?」と孫に尋ねていたのがその証拠です。もしかしたら、思想犯として逮捕状を出されたこともあながち冤罪とは言えないのかもしれません。

そのように捉えると、シェーンコップにとって自由惑星同盟は「祖父にとっての憧れの国」であり、ヤン・ウェンリーは「常に疑われ続けてきた自分を初めて信じてくれた人」ということになります。今後、彼が同盟への想いとヤンへの信頼を原動力に、どのような活躍を続けていくのか注目です。