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ノイエ銀英伝2話感想・考察その1「ヤン・ウェンリーの回りくどいセリフと本音」

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前回のあらすじ

宇宙暦796年(銀河帝国歴487年)、銀河帝国軍ラインハルト率いる2万の艦隊は、アスターテ星域にて、自由惑星同盟軍と対峙した。数に勝る同盟軍は、3方向からの包囲殲滅戦を仕掛けたが、帝国軍の各個撃破戦法により、第四、第六艦隊を失い、惨敗を喫していた。だが、同盟軍の通信から流れた声の主は言った。「心配するな、私の命令に従えば助かる」と。

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第2話「アスターテ会戦」より、今回取り上げるシーン

X時間前、自由惑星同盟次席幕僚・ヤン・ウェンリー准将は、第二艦隊司令官・パエッタ中将に呼び出されていた。パエッタはヤンの作戦案を「消極的だ」として却下する。ヤンは部屋に帰る途中、幕僚のラオ少佐と知り合う。

ラオから戦局について尋ねられたヤンは「我々は優勢だが、自分が敵ならこの機を必ずしも危機とは見ない」語る。その後、第二艦隊は想定中域に到着するが、そこに帝国軍艦隊の姿はなかった。パエッタから意見を求められたヤンは、敵が分散した艦隊の各個撃破に出てきた可能性を指摘する。

 自由惑星同盟側の主人公「ヤン・ウェンリー」

銀河英雄伝説 Die Neue These(ノイエ銀英伝)の第2話は、ラインハルトと対するもうひとりの主人公「ヤン・ウェンリー」が主役です。第1話ではナレーションと後ろ姿のみで描かれたやんでしたが、今回は冒頭から全編を通して登場することになります。2話は基本的にヤンの人となりやその智謀を描くのがメインの描写になっています。

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 2話にして初めて明かされる戦場の名前

ヤン・ウェンリーについて語る前に、冒頭のナレーションについて取り上げたいと思います。ナレーションの内容は「前回のあらすじ」という項目で本記事に前述したとおりです。

私の記憶が確かであれば、第1話において「アスターテ星域」という言葉は登場していません。従って、今回のナレーションで初めて戦場の場所が示されたことになります。

なぜこれまで戦場の場所が示されなかったのか、理由はいろいろ考えられますが、わかりやすいものとしては「1話のテーマには含まれないものだったから」という点が挙げられるでしょう。

ノイエ銀英伝の1話は、「この作品で描きたいテーマはなにか」を示すためのエピソードであったと考えられます。そのため、世界観の説明も「銀河帝国、自由惑星同盟、フェザーン自治領」という3つの勢力がある」という最低限に留められていました。主人公であるラインハルトの個人的な背景ですら、まったく触れられていません。ここで具体的な固有名詞だけが出てきてしまっては、視聴者に余計な情報を与えてしまうことになったはずです。それを避けるために、戦場の名前を説明するナレーションすら、2話に回してきたのではないでしょうか。

 ラインハルトの鏡になるヤン・ウェンリー

ヤン・ウェンリーは、「作戦案を上司から却下される」というあまり名誉とは言えないシーンで初登場を飾ります。このシーンは、ラインハルトが最初に「部下からの撤退の進言を却下したシーン」と対になっていると考えると意味するところがわかりやすいでしょう。まだ具体的な描写こそありませんが、視聴者は「ラインハルト=有能、彼の部下=無能」という描写を1話で見せつけられています。そこから推理して「ああ、このヤンは有能な人物で、彼の上司は無能なんだな。つまり、同盟側は『無能な上司と有能な部下』という構図で描かれていくのか」ということがなんとなく理解できるというわけです。

もちろん、これはここまでの流れを見ることによってなんとなくイメージできる印象に過ぎません。しかし、作品の「見方」がある程度見当がつくことで、視聴者の側にも「見る体勢」が整います。銀河英雄伝説はわりと扱うテーマが難しいので、ある程度最初にわかりやすく「こういう感じで描いていきますよ」という体を見せておくことによって、視聴者が作品世界をより理解しやすくなるような手伝いをしているといえるでしょう。

 ヤンとラインハルトは、何らかのテーマの象徴

作戦を却下されてしょんぼりしていたヤンは、幕僚のラオ少佐と知り合います。ラオ少佐はヤンを「エル・ファシルの英雄」と呼びますが、これが何を意味するのかは劇中ではまだ明らかにされません。このことから、ヤンというキャラクターの「背景」を描くのが2話のテーマではない、ということが理解できるはずです。

同じく主人公であるラインハルトも、人物としての背景がここまででほとんど描写されていません。少なくとも彼ら2人は、ストーリー上で表現したい何らかのテーマを表現するための「舞台装置」として存在しているのだと推測できます。もちろん、彼らも物語の上では「人間」ですから、親や家族もいれば、これまでたどってきた人生もあるでしょう。しかしそれらはあくまでも副次的なものに過ぎず、ストーリーの上で彼らを通して描きたい「テーマ」が存在し、それを先に描写する必要があったためにキャラクター的な背景は「後回し」にされたのだと考えられます。

 先にオチを見せることで、視聴者がヤンに共感できる

ラオ少佐や、後のシーンでパエッタに語った内容などから、ヤンはラインハルトの策をほぼ完璧に看破していたことがわかります。1話でキルヒアイスがその存在を危惧していた、ラインハルトに匹敵する秀でた「誰か」とは、まごうことなくヤンのことだったと確かめられた形です。

1話のラストでヤンがその後艦隊の指揮を引き継いでいることから、おそらく何らかの方法でラインハルトに対抗するのだろう、と視聴者は予測できます。ここから先のシーンでは、どうやって帝国軍の策を打ち破っていくか、ヤンに共感しながらストーリーを楽しんでいくことができるわけです。

ヤン・ウェンリーは上司に信頼されていない

最後に、ヤンがパエッタに語った台詞を取り上げたいと思います。想定していた中域に帝国軍が存在しなかったことから、パエッタはヤンに意見を求めます。このとき、ヤンは以下のように回答するわけですが、ずいぶん回りくどい言葉を選んでいるのが面白いところです。

ヤン「敵は各個撃破に出てきたということでしょう。まず最も少数の第四艦隊を標的にするのは当然の策です。彼らは分散した同盟軍の中から当面の敵を選択する権利を行使したわけです

パエッタ「第四艦隊は持ちこたえることができるだろうか?」

ヤン「数において相手を上回り、しかも機先を制したほうが有利になります

特にユニークなのが赤字の部分です。なぜヤンはこんな言い方をしたのでしょうか?

ヤンが事前に提出した作戦案がどんなものであったのか、具体的にはわかりませんが、事前にラインハルトの策を看破していたことから、もし採用されていればそれを防ぐことができたものだったのは間違いないでしょう。当然、ヤンは策が却下された時点で最悪の場合は今回のような自体になると想定していたはずです。

パエッタから質問を受けたとき、ヤンはいくら背を向けていたとは言え上官であるパエッタの前で帽子を取り、頭をかいています。これはヤンの軍人としては「ゆるい」性格を示すシーンであるとともに、「やれやれ、だから言ったのに」という呆れ・諦めの感情を示すシーンであるとも言えるでしょう。

ヤンの策を却下する際、パエッタは「言っておくが、君に含むところがあるわけではないぞ」とわざわざ付け加えています。この発言が真意かどうかはわかりませんが、ヤンはこれを受けて「パエッタは自分を信頼していない可能性が高い」と判断したはずです。

つまり、「自分の作戦案を却下したこと」、「自分を信用していない可能性が高いこと」の2点から、ヤンは上司であるパエッタの軍人としての能力と人間性に不信を抱いていたと考えられます。こうした感情が、不自然な言葉を選んで行ったパエッタへの返答に現れているのではないでしょうか。

 回りくどいセリフに隠れたヤンの本音

では、赤字で書いた部分について、ヤンは本当はなんといいたかったのか考えてみることにしましょう。

彼らは分散した同盟軍の中から当面の敵を選択する権利を行使したわけです

このセリフに先立ち、「敵が各個撃破に出てきたこと」、「数が少ない第四艦隊を標的にしたこと」を指摘しています。おそらくこれらは、先に提案した作戦案の中で警戒していた敵の動きに含まれていたことでしょう。

でも、「私が先に言ったとおり敵は各個撃破に出てきて、第四艦隊が狙われてしまったんです」などという言い方をしたら角が立つので、より穏当な言葉に置き換えて説明したわけです。

問題の赤字の部分も本音では「作戦に穴があったので、敵にそこを突かれて主導権をとられてしまいましたね」と言いたかったのでしょう。

数において相手を上回り、しかも機先を制したほうが有利になります

各個撃破の標的にされた第四艦隊が持ちこたえられるかどうかという点に関するヤンの見解を表したセリフです。こちらも同様に、本音では「数で負けてしかも先手を取られてるんだから、負けるに決まってるでしょう」と言いたかったはずです。

劇中ではまだ明確な描写は少ないものの、ラインハルトが部下たちに信用されていなかったように、ヤンもまた上司の信頼を得られていない理由が存在します。ヤンもそのことを十分理解しているので、上官の機嫌を損ねず、かつ失言をとられないように慎重に言葉を選んで話している、ということがわかります。

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