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ドラマ版「賭ケグルイ」はアニメ・漫画実写化の成功事例となるか?

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人気のアニメ・漫画作品が映画やドラマなどで実写化されるケースは少なくありません。一定数いる原作ファンによる視聴が期待されることから、日本の作品作りで繰り返されてきたパターンです。しかし、大抵のケースでは原作ファンをがっかりさせるような結果にしかならないのがほとんどではないでしょうか。

今回はそうした実写化された作品の中から、「賭ケグルイ」をご紹介しましょう。放送時間が深夜帯なので、決して大きな話題になっているとはいえませんが、私はこの作品を、原作の雰囲気を損なわず、実写ならではの良さを体現できた「漫画・アニメ実写化の成功例」だと考えています。実写版「賭ケグルイ」のどのような点が素晴らしいのかご紹介するとともに、成功した理由を分析してみたいと思います。

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アニメ・漫画の実写化が失敗する理由

アニメや漫画の実写化が失敗する理由について、漫画家の山田玲司氏は次の3点をあげています。

引用元:

7月14日に上映開始された実写映画版『銀魂』。今夏は銀魂のほかにも『東京喰種』『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』など人気作の実写映画化の公開が控えているが、原作ファンから「頼むからやめてくれ」「また実写化か…」といった、作品の仕上がりを心配する声がSNSを中心に多く寄せられている。『山田玲司のニコ論壇時評...

「ヒットしそうなネタ」ありきで進められる作品作り

これで漫画原作の映画とかを作ろうとすると落とし穴になる。今の若い人はこういうの好きでしょ? みたいな非常にふわっとしたものになるんだよね。実際に若い人がそれを求めてるかどうかは、わからないんだよ。

「面白い作品を作ろう」という発想から作品を作ろうとするのではなく、手っ取り早く「今ヒットしそうなネタを探して、そこから作品を作ろう」と考える発想法から作り出される作品は、非常にぼんやりしたものになってしまいます。

スタッフの暴走による原作改変

俺を見ろ! っていう、こういう人が制作の中に入っていると、原作よりも俺が目立ちたいって、仕事をするんだよ。で、これも結構な駄作になる可能性が高くて。

山田氏は「俺を認めろ病」と表現していますが、監督や脚本家など実写化に係るスタッフが自身の感性で原作を改変し、それが原作ファンから不評を買うといったケースのことを指しています。

「スター×話題のアニメ・漫画」というビジネスモデルの存在

スターを出せば客が入るってビジネスモデルは昔からあるんだけど、日本はたぶん80年代ぐらいのこれと、あと、角川映画で薬師丸ひろ子が出てればいい、原田知世が出てればいいっていう、アイドル映画を作るじゃん。そこからの系譜があって、これが大きな保障になるんだよ

で、これがマーケットを支えちゃうから甘えるんだよ。

山田氏は1980年代に作られた「たのきん映画」を例に上げ、「今話題の作品を、人気アイドル主演で実写化すれば、それだけで一定のヒットが狙える」というビジネスモデルの存在を指摘しています。原作とキャストで人気が保証されるのであれば、誰も中身にこだわろうとはしなくなるでしょう。

以上のような理由から、アニメ・漫画の実写化はビジネスとしての成功・失敗はともかくとして、原作ファンからは厳しい目で見られるような作品ができてしまう事例が少なくありません。実写版「賭ケグルイ」はそうした点にどのように立ち向かったのでしょうか?

「賭ケグルイ」の作品紹介

実写版「賭ケグルイ」について語る前に、賭ケグルイという作品自体について説明しなくてはなりません。

「賭ケグルイ」はスクウェア・エニックス刊『ガンガンJOKER』にて連載中の、原作:河本ほむら、作画:尚村透による漫画作品。

「賭ケグルイ」はスクウェア・エニックス刊『ガンガンJOKER』にて連載中の、原作:河本ほむら、作画:尚村透による漫画作品。

「公然と生徒同士のギャンブルが行われ、その勝ち負けによって学校での地位やその後の運命までが左右される」という、極めて非現実的なギャンブル・学園モノの作品です。ギャンブルの勝敗・駆け引きはもちろん、それによって生じるキャラクターの心理描写や表情の変化を見せる「顔芸作品」という側面も持っています。

2017年2月からTVアニメ第一期が、2017年11月よりテレビドラマ版が放送されました。

2018年1月よりMBS、TBSにて放送開始。原作:河本ほむら・尚村 透(月刊「ガンガンJOKER」にて連載中)監督:英勉|ドラマ『賭ケグルイ』公式サイト

実写版「賭ケグルイ」の特徴

実写版「賭ケグルイ」には以下の3つの特徴があります。それによって、2次元の世界から3次元の世界へと表現の枠を移しても、原作の雰囲気を損なわず見事に作品世界を表現することに成功しているのです。

ミュージカル的な演出

山田玲司氏が指摘した3点には含まれていませんが、アニメ・漫画の実写化を難しくする原因のひとつに、「抽象度の違い」があります。アニメ・漫画が「絵」で世界観を表現しているのに対して、実写では現実に存在するモノや人を組み合わせて作品世界を表現しなければなりません。これは非常に大きな足かせになります。

この点をうまくカバーしているのが、「2.5次元」とも形容される「アニメ原作のミュージカル作品」でしょう。これらの作品は「舞台の上で、リアルタイムで役者が演技する」という、実写化以上に高いハードルがあるにも関わらず、ファンから好評を博している作品も少なくありません。

実写版「賭ケグルイ」には、こうしたミュージカルでよく見られるような演出がうまく取り入れられています。

  • 登場人物がカメラに向かって語りかける
  • 特定の人物が「心の声」を実際の演技で披露する。その間、他の人物は静止し「時が止まる」

以上のような、ミュージカルでよく見られる表現手法が作中で何度も使われているのです。本作はギャンブルの駆け引きに伴う心理描写、キャラクターの表情変化が重要な作品でもあるので、こうした演出方法と相性がいいのもメリットだといえるでしょう。

プラスに働くキャラ改変

実写化に伴う「原作改変」の中でも、特に評判が悪くなりがちなのが「キャラクターの改変」です。実は、賭ケグルイにおいても一部、キャラ改変は行われています。たとえば、主要キャラクターの1人である早乙女芽亜里が「原作では金髪なのに、ドラマでは茶髪」、敵キャラの木渡潤が「原作では裸眼なのにドラマではメガネを掛けている」といった具合です。

しかし、これらのキャラ改変は原作の雰囲気を壊すのではなく、むしろ盛り上げるのに寄与しています。早乙女芽亜里の髪色については、原作のままの完全な金髪であればむしろコスプレのような不自然さがでてしまっていたでしょう。

木渡のメガネについては、おそらく彼を演じる矢本悠馬氏の個性に合わせた改変ではないかと思います。矢本悠馬氏は「大河ドラマ おんな城主 直虎」の中野直之役や、本作と同じ実写化映画である「ちはやふる」の西田優征(肉まんくん)で知られる役者さんです。本作での演技も素晴らしいのですが、原作の木渡潤とは外見的な印象はやや異なっています。

「キャラを崩さず、演技力のある俳優の個性を活かすために、あえて優先度の低い外見的な差異に目をつぶった」と考えれば、メガネを掛けさせたのはむしろ英断だったといえるでしょう。おかげでドラマ版の木渡には、原作にはなかったコミカルなインテリヤクザのような雰囲気が備わり、出番も増えています。

テロップ入りのルール説明

本作では、作中オリジナルの変わったルールを持つギャンブルが多数登場します。自分のペースで見返したりするのが難しいアニメ版を見ていたときにも感じたことですが、普通に見ているとなかなかルールが理解しにくいこともあります。

実写版では、「画面上にテロップを表示する」という思い切った手法でこの欠点をカバーしています。アニメやバラエティではよく見られる演出ですが、ドラマや映画では作品の世界観を壊すことにもつながりかねないためあまり多用される方法ではありません。せいぜい役名や立場が表示される程度に留まるのが一般的でしょう。

しかし、本作ではすでに述べたように、ミュージカル的な演出が取り入れられており、原作の「顔芸」を再現するため役者さんの演技もかなりオーバーになっています。元々「2.5次元」やアニメに近い雰囲気がある中にこうしたテロップが表示されてもメリットのほうが大きいのです。逆に、ミュージカルではテロップの表示はできないため、この点においては表現技法の面で勝っていると言うこともできます。

 「3次元と2次元の親和」が実写化成功の秘訣か

実写版「賭ケグルイ」は、「もともと突拍子もなく、現実感がない原作の世界観」を逆手に取り、「ミュージカル的な演出」と「オーバーな役者の顔芸」によって「3次元を2次元に近づける」という方法を取りました。これはすでに実写化において一定の成功を収めているミュージカルに近い手法です。

一方で、「金髪のキャラを茶髪にする」、「キャラの外見を役者に寄せる」というふうに、「原作をリアルに近づける」努力も怠っていません。あくまで原作を変えるのは「キャラの外見」といったストーリーや個々のキャラクター像に関わらない部分にとどめているのもプラスに働いているはずです。

  • 演出によって「3次元を2次元に近づける」
  • 変えても問題ない部分だけを変え「2次元を3次元に近づける」

これらを両立させることによって、実写版「賭ケグルイ」は、ストーリーやキャラの原作改変を防ぎながら、面白い作品を作り上げることに成功しました。これから実写化される漫画・アニメ作品は、こうした取り組み方を大いに学ぶべきではないでしょうか。

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